城南コンサル塾のカリキュラムの中でも、私たち塾生の多くが楽しみにしていた工場見学が10月24日に開催されました。小泉誠二講師と城南コンサル塾スタッフ3名の引率のもと、19期塾生16名は大田区にある2社のまち工場を訪問しました。
大田区には約3,500の工場があり、「ものづくりのまち」として知られています。今般、見学した1社目は、高精度な大型旋盤加工やワイヤ放電加工を得意とし、様々な材質の加工経験に基づくニーズ対応力を強みとしたF社です。社長による案内のもと、人工衛星の部品用に製作した超薄型精密加工製品のサンプルを拝見した後に、防衛用途に使用される大型金属加工物の製造過程を見学するなど、製造物の多様性さ、発注元のニーズに細かく対応する柔軟性と品質に対するこだわりを間近で感じることができました。
2社目は、切削加工を中心に難削材や異形ワークの高精度加工を得意としたK社です。独自のノウハウを持ち、NC旋盤を用いた高精度な加工を行うだけでなく、後加工となる穴あけ加工(ドリル)、タップ(ネジ穴)加工、フライス(横削り)も行うことにより、ワンストップで高品質な製品を提供できるところが強みです。また、K社社長は、金属加工だけでなく、自社の精密加工技術を応用した美容機器の製品化を行ったり、高速3Dプリンタ製造に参入したりと、積極的に自社の可能性を追求しておられました。将来は新たなプロダクトを生み出すベンチャーを支援したいとのお考えがあり、そのためのプラットフォームを作りたいという想いを熱く語っておられました。
日本の「ものづくり」が衰退しつつあると言われて久しいなか、見学したF社、K社ともに前向きで新たなことに挑戦しており、工場では若い従業員がいきいきと働いている姿が印象的でした。一方で懇親会の席では、両社長から、経営難に陥って眠れなかった話や、従業員が一気に辞め、社長一人で4台のマシンを徹夜で稼働させ納期に間に合わせたといった苦労話を聞くことができました。両社長は中小企業診断士に求めるものの一つとして「困った時に本音で話せる関係性」とおっしゃっていたことが印象的でした。私たち中小企業診断士は、知識はもとより、経営者の苦労を心から受け止め、親身になって話し合えるコミュニケーション力も重要であると感じました。
K社社長は『まち工場には「街の工場」と「待ちの工場」の2種類がある、アクションを起こすことで新たな未来が生まれるのであって「待ち」ではだめだ』と話しておられました。さらに「想像できないものは決して実現できない、将来のビジョンをしっかりと持ち、アクションをおこしていくことが重要」とも語っておられました。この2つの言葉は、私が今回の工場見学で得た宝物であり、今後の診断士活動の一つの指針として心に刻んでおきたいと思います。
(Writer:城南支部 岩水 宏至)